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いいひと。

 4月16日

彼女の家は電波が悪い。
電話を掛けてもつながらなかったり
メールも何時間もたってから届いたりした。


土曜日の早朝。
俺は当直明けで重い体を奮い立たせ、朝っぱから部屋の大掃除していた。

だって・・・彼女が部屋に来る。

以前一回だけ来たことはあるけど一人は初めてだった。
昨日電話してるとき、

「そういえばあの映画のDVDもってるんでしょ?」
「ん?ああ、あるよ。まだ見てないけど」
「見たいなぁ。うちは汚いから、そらくん家で見よう。」
「いいけど、明日何時にする?」
「うんとね、今日これから私の歓迎会があるの。」
「はいはい。んじゃ午前中は無理やな。」
「あは、そやね。多分死んでる。」

というわけで今に至る。
俺以上の方向音痴の彼女。俺んちなんて場所も覚えていない。
昨日、歓迎会の出発前で急いでる彼女に
とりあえず3時位に待ち合わせで場所は明日決めようと伝えて切った。

雨の中をデパートに歩いて向かう俺は不安でしょうがなかった。
今日一回も彼女と連絡が取れてない。
何度掛けてもつながらず、一度掛かったが出なかった。
メールはいつ届くかわからない。
でも、一度着信を入れておいたから向こうから連絡があると思ってた。
しかし、もう2時。なんど掛けても相変わらずつながらない。連絡もない。
もしかして、まだ寝てるんかな。
どうしよう。唯一確実な約束は3時に待ち合わせ。

「3時に近くのデパートで待ち合わせ。もしこれを見たときに3時過ぎてたら
連絡&ダッシュしなさい」

とだけメールしてデパートに向かったのである。多少の遅刻は待つつもりだった。

  今回はちょっと長いです。
30分経過。
依然連絡はつかない。
携帯社会の世の中で連絡がつかないのが
こんなにも不安になるなんて

まだ寝てるのかな。 メールとどいてるかな。
なんかあったんじゃないかな。
看護師やから急患で呼び出されてんのかな。
想像は尽きない。
しかも大抵わるいほうにいってしまう。

しばらくして携帯の着メロがなった。
彼女からのメールだ。

「用意できました。いつでもいいよん。」

ん?
これは俺のメールは見てないな。
とりあえず押し出されるのを期待してメールをおくる。
電話は・・・つながった!
・・・・・なんで出ないの!
留守電に切り替わり電話を切る

それからも何度も掛けなおし、やっとつながって
「今どこ?」
ってたずねて。
「え?いま、うち。」
っといわれた時はさすがに。

なんでやねん!

と突っ込まざるをえなかった。

やっと会えたとき、メールを見た彼女は何度も謝った。
「ごめん。本当にごめん。」
時間は4時をかるく過ぎてた。

 いいよ。なんもなくてよかった。

しとしと降る雨の中を、だべりながら歩き。
我が家にたどりつく。
戦前に建てられたらしいボロボロの家。
まさか女の子を呼ぶとわ思ってもいなかった。

部屋の中は寒かった。
コタツをつけっぱにしといてよかった。
「寒いやろ。コタツついてんで。」
「では、お言葉にあまえて。」

来る途中にビールとお菓子を買い
宅配ピザをまってDVDをみる。
映画を2本見おわりテレビを見だした
用意してたワインとチーズを飲みながら色々話をした。
仕事のこと。
家族のこと。
恋愛のこと。

俺は彼女が最近まで好きだった人をまだ引きずってるのか聞いてみた。
意外と淡々と話す彼女。
結構遊んでる人なのに、なぜか惹かれてしまったこと。
好きだったのか、ただの憧れかわからない事。
(まだ好きなんやな。)
けど、彼女は忘れようとしているらしかった。
かなわぬ恋。遊び人の男。嫉妬深い彼女。友達グループの一人。
マイナス要素は確かに多かった。
たとえ付き合っても、彼女は彼の遊び癖を許せないだろう。
だから、あえて何も言わなかった。

ワインが空いたら、簡単なカクテルを作った。
しばしば仲間内の宴会場に使われる我が家はお酒のストックもなかなかで
趣味でひととおりのお酒を置いていた。
一部では「居酒屋 そら」でとおってたらしい。

それから先は、なにを話したかはあんまり覚えてない。
仕事の愚痴を聞いてもらったり、アドバイスしたり。
ほとんどがたわいも無い話だった。
1時を過ぎると彼女がコタツで寝だした。

まったく。

彼女に毛布を掛け、寝床の用意をした。
この地域の朝晩の冷え込みは半端じゃない。
すでに現在ファンヒーターもフル稼働していた。
布団に電気毛布。

これなら大丈夫かな。

つぶれてる彼女をお姫様抱っこで寝床に寝かす。
こういう時は鍛えてて良かったと思う。

「なんかこれ気持ちいい。」

はいはい。 意外と軽かった。

「ごめんね。重いでしょ。」
「ぜんぜん、ちゃんと食ってんのか?」
「えへへ。ありがと。」

くっそー。かわいかった。
彼女はすぐに表情にでる。
屈託のない笑顔は胸をキュンとした。
こりゃ、ときめいてるな俺。
すこし、嬉しかった。

明かりを豆電球だけにして彼女の寝顔を眺めてた。
眉毛が半分なかった。(笑)
天邪鬼で照れ屋の彼女はじっと顔を見さしてくれなかった。
ここぞとばかりに寝顔を観察。

でも、すこし複雑な気持ちだった。
無防備すぎるだろ。おい。
信頼されてるんだろうけど。
おかげでお兄さんは天使と悪魔が取っ組み合いですよ。
寝れやしねぇ。

どう思ってるんだろう。俺のこと。
嫌いではない。それは分かる。

二人っきりで男の部屋で映画見て
その後飲みながら何時間も話して
しまいには酔いつぶれてねむる。

友達に話したら、それでなんもなかったの?と言われそうだ。
俺だったら言う。
しかし、自分がこういう状況になるとなんにもできない。

ドウオモッテルノ?

何度も頭の中を駆け巡る。答えはでない。
ああもう!

そんな男の葛藤もしらないですやすや眠る彼女。
なんか悔しいな。

こっそりキスした。

すると彼女は寝言のような何かを言いながら俺の頭に手を回してきた。
ん?
もしかして起きてる?
確かに、彼女は俺よりお酒に強かったはず。
ううむ、どっちだろう。

「起きてんの?」

率直にきいてみた。
無反応。
また混乱してきた。
というよりは頭の中の悪魔君が優勢に立ち始めた。

 (じつは起きてて、俺の反応みてるんじゃないの?)
 (というより、素直じゃない彼女は俺が来ることを待ってるんじゃないの?)
 (誰がどう見たって、この状況で何もないなんておかしいだろ。)

都合のいい想像に拍車がかかるも、理性派の俺の政権は取れなかった。

寝よう。
とはいえ、布団はない。コタツか彼女の横か。
悩んだ。起きて俺が隣に寝てたらどう思うかな。
ううむ、いたいけな青少年を苦しめた罰で
添い寝くらいがまんなさい!

彼女の横にはいる。
もう一回こっそりキスする。
すると両手で俺の頭を抱え込んできた。

ええええ!
やっぱ起きてんの?

 (彼女は俺が来るのを待ってたんじゃないか?)

さっきの悪魔君がついに政権を奪還した。

キスをする。
耳や首筋を舐めると、明らかに反応していた。
反応を確かめながら少しずつ攻める。
愛しかった。素直な反応がうれしかった。
ブラのホックをはずすと彼女が小さくつぶやいた。

「ハヤシィ」

ん?

「はやし?」
「ハヤシィ」

はやし?林?
もしかして、好きだった彼の名前?
聞いたことなかったからわからないけどそんな気がした。

「林じゃなくてそらやで。」
「そらくぅん?」

わからない。

そんな表情だった。


なんだそれ。
なんだそれ。
なんだよそれは!
俺じゃなかったのかよ。
俺じゃ・・・なかったのかよ。

泣きそうだった。
下手に告白して振られるよりショックだった。

彼女はまだ分かってないようで
「はやし?」
何度も呼んでた。

つらかった。切なそうに言う彼女が。
目に涙がにじんできた。

男は好きじゃなくてもセックスはできる。
実際したこともある。
いつもなら高ぶった気持ちを抑え切れなかったかもしれない。
女性にはわからないかもしれないけど、
好きでもない子だったら。抱いたかもしれない。
男はそういうもん。

けど、この子は無理だった。
その男が憎くかった。
自分が情けなかった。
こんな失恋きついよ。

「・・・ごめんな。」

彼女の服をなおしてベットを出る。
眠れそうもない。
もう一杯のんで無理やり寝たかった。

「そら君まだ起きてんの?」

不意に後ろから声をかけられ
ドキッとした。
どう反応すればいい?

「失恋のいたでを癒してんの」

できるだけいつもどおりにした。

「なにそれ?寝れんの?しかたないなぁ。特別に隣においで。」

さっきとは違ってはっきりといつもの彼女だった。
しかし、普通過ぎる。

「まさか、ほんの数分前のこと覚えてないの?」
「え?なに?なんかした?」

・・・・・・。
あったまきた!

「はやし。ってだれ?」
「え?何で知ってんの?」
「何度も呼んでたよ。この前いってた彼?」
「うん。 ねぇ、ほかに何か言ってた?」

やっぱりかぁ。
今考えるとハヤシィからその彼を連想できた自分にびっくりだ。

さっきまでの状況を説明した。
彼女はみるみる取り乱していった。

「え?え?どこまで?まさか・・・」
「大丈夫だよ。最後まではしてない。」
「全然覚えてない。ショックやわ。自分が情けない。ごめんね。」

 やめてくれ

「謝るなって。よけい惨めになるやろ?つうか俺が謝るほうだろ。
 どっちかといえば。」
「けど、なんでそうなったん?そら君でもそんななるんやな。」

はい、あったまきた。

「あのなぁ。この状況でまったく意識しない男がいたら病院いったほうがいいぞ。」
「でも、友達やんか。」

・・・・。
なにげない一言が胸に突き刺さる。
そっか。やっぱりか。
また、男にも見られてなかったんか。
だよね。普通なら少しは意識するわな。
あんだけ安心して飲んで寝られたらその時点で気づけよな。

あほやな。おれ。

あまりにも男をわかってない彼女。
聞いてみたら、男性との経験はなかったらしい。
よかった。やめといて。あんな喪失はいやだろうしなぁ
しかし、だからこそ心配になる。
そこから説教がはじまった。

「よく聞きなさい。普通の男ならあの状況ではやめないからね。
 無防備すぎるぞ。まじで。男は信用したらいかん!」
「男の人は好きじゃない人でもエッチできるって言うもんねぇ」
「せやで、俺がどんだけ葛藤したか!」
「あはは、ごめんなさい」

話は「はやし」にもおよんだ。

「そこまで好きだったら正直に気持ちを伝えたら?そこまで恋焦がれてるんなら
 伝えなきゃ。後悔するだけだよ。友達のままでいいってのはよくわかる
 けど、それじゃ前には進まないんだって。」
彼女もそれは分かってる。
でも勇気がでない。
わかってる。
おれもそうだから。
だからこそ背中をおしてあげる。
次に進むためにも伝えなきゃ。

「弱音聞くくらいなら無料できいてあげるで。」
「ありがとう。どっから有料なん?」
「ん?そうやな、彼の身代わりからかな。」

もとの雰囲気に戻ってた。
結局またいつものパターンだった。
「もし、仲良くなって好きになって、やっと気持ちに気付いたときには
彼女には好きな人がいて、相談されたり・・・
そんで励まして、手伝いまでして。
もう、あんな思いはしたくない。 」4/7それだけ。抜粋

見事なまでの「いいひと」だった。

しばらく話して同じ布団で寝た。
心なしか彼女が甘えるようにみえた。
でも、もう意識はしない。ここまで異性に見られてないんじゃ
さしずめ「おっきなクマのぬいぐるみ」感覚だろう。

全然わかってないなコノヤロウ。

意外と早く起きた。彼女も同じくらいに起きたらしい。
腕枕してた腕は意外となんともなかった。

「おはよう。」

普通なら恋人どおしが交わすようなあいさつを交わす。
すこし嬉しいのが悔しかった。

そのあと、テレビ見たり二日酔いの俺を看護してくれたり
だらだらした休みを満喫していた。
昼も過ぎた頃に「はやし」の話になった。

「はやしとはこんな感じになったことないの?」
「・・・・なんで名前知ってんの?」

・・・・はぁ?
夜のあの本音トークまで完全に記憶にない彼女
あっきれた。

「あのねぇ・・・・」

同じように取り乱し、そして同じように説教を受ける彼女。

なんだこの休日

 春はまだ始まったばっかりだった。
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8件のコメント

[C61]

.・・・これ以上俺にどうしろと・・・

いや、待ちたまえ!
お前、それ説教してる場合か?

いや、まぁいい。

そんくらいであきらめんな!

友達から彼氏への道もあるじゃないか。
友人としてものすごい応援したる。
つーかほかの訪問者の方に
こういうコメントの残し方って
ひょっとして迷惑?
公私混同極まりない?

申し訳ないな・・・

  • 2006-04-17
  • 仙人
  • URL
  • 編集

[C62] コメント返事

>>仙人
ありがとう。
どうなんだろうね、俺的には嬉しいけど
どうでしょう皆さん。

[C63]

2人きりの部屋で無防備に寝るなんて・・・相当な葛藤だったでしょう。
女のわたしでもそれはわかります・゚・(ノД`)・゚・

好きだから手が出せない。
そらさんは彼女のこと本当に好きなんですね。

そらさん=いいひとなんか決まってません!
今回の恋はいいひとなんかじゃ終りません!終らせません!
焦らず彼女を振りむかせましょう。

[C64] 通りすがりですが^^;

いやはや、俺も似たような経験があって、なんか、読みながらビクビクしてしもた 笑。
そうゆう女性は、何かの法律で裁いてやりたいね笑。でも、魅力的なんだなぁーそういった女性に限って。果てしなく魅力的なんだなぁ。。あぁなんか俺も切なくなってきた!!

[C65]

ゆっくりと読ませていただきました。大変な夜だったのですね^^;
私は無責任な言葉は言えません。そらさんの恋なのだから。
でも、一つだけ言えることは、そらさんが彼女にも言ってた言葉、
「後悔しないように。」です。
この瞬間を思いっきり恋をしてください。

それにしても、彼女の無防備なこと^^
それがまた無邪気で可愛く思えたりしちゃうのでしょうね。
そらさんの出す「安心感」や「いい人」はそらさんの長所だと私は思いますよ。

[C66]

がっはっはっは。
やー、笑ったー。

や、本人にしたら笑い事とちゃうんやろうけどなぁ。
でも、なんっかこの場面の一つ一つがあまりにリアルに想像できてさぁ。
あたしもあんたの部屋やったらフツーに寝る方。
がはは。
けど、仙人のいうように友達から昇格する場合もあるよ?
君も知っている筈だ。
ま、長期戦やな。
  • 2006-04-19
  • びぃこ
  • URL
  • 編集

[C67]

いいひとで通しつつコッソリ様子を見るのもありだろうし、
でもでもたまには思い切って、違う人間になって
彼女を驚かせてみるのもいいかもしれないし^^
続きの話をまた楽しみにしています。

そうそう「居酒屋 そら」いいですね。
行き詰ったときにフラリと立ち寄ってみたくなりました(笑)

[C68] コメント返事

>>iso
そうですね。あせらないことにします。
>>tube_amplifier
何に惹かれているのかは分からないんですけどねぇ
なんか気になるんですよ。
>>ruri
長所なんですかねぇ。不安になってきた
今日この頃です。^^;
>>びぃこ
余裕で寝るでしょうねあなたなら。
びぃこさんがいうと説得力あるねぇ。
>>Reina
コッソリひっそり様子を見ようと思ってます。
JAZZの流れる「居酒屋 そら」
でも部屋が寒くてコタツからは誰も出れない。

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プロフィール

そら(22)

Author:そら(22)
趣味 サッカー・最近読書
好きなこと 珈琲やお酒を飲みなが
      ら何かをすること
好きな音楽 ブラジリアン・ジャズ
      を中心にジャズが最近
      マイブーム!

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 返事します。

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